慢性炎症
歯科領域・耳鼻科領域の慢性炎症は、
口や鼻から離れた全身に様々な症状や病気を引き起こす(病巣疾患)ことがあります。
※ 病巣疾患は、以前は「病巣感染」と呼ばれていました。
ひどい虫歯になると歯の根に膿がたまります。
丁寧に根管治療をすれば膿も毒素も取り除かれます。
しかし、取り残しがあると…。
歯の根に毒素がたまり、体に悪影響を及ぼします。
歯の根にたまった膿が、
右の写真のように歯ぐきに飛び出てきます。
歯の神経(歯髄)が死んだ歯を失活歯といいます。失活歯は根尖に病巣がある歯だけでなく、根管治療が成功して根尖に病巣が無い歯も失活歯といいます。
海外の一部(全てではない)では失活歯が全身に悪影響を与えることを問題としています。
卵巣癌の腫瘍マーカーCA125(基準値35U/ml以下)が異常値の117U/mlだったのが10分の1以下の11U/mlに下がり、基準値以内になった。
酷い生理痛を伴う子宮内膜症が良くなるとは思ってもいなかったのに著しく改善してビックリ!
ガン治療において失活歯は抜歯が原則である、などのアメリカでの自然医療の現状も語っていただきました。
患者さんの言葉「命を助けてもらったと思ってます」
智歯(親知らず)は最後方に位置するために清掃が難しく、智歯周囲の歯周組織の慢性的な炎症を起こしやすいです。特に半埋伏(歯肉に半分埋まっている)の智歯は、歯肉縁下の清掃は極めて難しく、殆どの場合慢性的な炎症を起こしています。
完全に萌出していて清掃が行き届き、上下の智歯がしっかり噛みあっている場合、智歯は残すべきです。しかし、多くの智歯は近心に傾斜していたり、歯肉に埋伏しています。清掃が行き届かない、慢性炎症の原因となりうる智歯は抜歯をお勧めしています。
この図は理想的に親知らず(第三大臼歯)まできれいに萌出した状態ですが、このような状態はまれで、多くの場合は問題のある生え方をします。
親知らずが骨の中に閉じ込められ萌出できずに埋伏した状態になっています。
埋伏している親知らずは、その生えようとする力によって手前の歯の根を溶かして歯を痛めます。
親知らずが問題のある生え方をしていると、多くの場合、歯磨きが不十分となります。歯磨きが不十分な状態が続くと、疲労・睡眠不足などで身体の免疫力が低下した時に、親知らず周囲の歯肉が腫れることがあります。(智歯周囲炎)
清掃が行き届かない
手前の歯(右側第二大臼歯)が虫歯になっている
智歯と右側第二大臼歯の間のスペースが細菌の温床となっている。
虫歯菌・歯周病菌など悪玉細菌が全身へ波及し、血管・臓器にダメージを与えます。
抜歯に至るまでの1年の間
細菌が血流に乗って全身へ波及、血管と臓器にダメージを
与えていました
来院時(初診時)、半埋伏の智歯(親知らず)を放置していたため、右側下顎第二大臼歯を支える骨が無くなり抜歯となりました。
右側下顎第二大臼歯の智歯(親知らず)との接触している部位が虫歯にもなっています。
当医院を受診し、抜歯に至るまでの間
細菌が血流に乗って全身へ波及、血管と臓器にダメージを
与えていました
親知らずの抜歯直後に上がらなかった腕が上がるようになった症例
(この症例は細菌とは関係ない症例です。)
現在症状の無い親知らずを予防的に抜くかどうかは、ドクターによって意見が異なります。
当院では現在症状が無くても、これまでに症状が出たことがある、または将来的に悪影響を及ぼしそうな親知らずに関しては抜歯することをお勧めしています。
最終的には、親知らずを抜くメリットとデメリットを十分にご説明させて頂いた上で、患者様に選択して頂いています。
メリット・デメリットをご納得された上で、
抜歯するかどうかを選択して頂きたいと思います。
歯は骨に直接固定されているわけではなく、歯の側の繊維と骨の側の類似の繊維が相互に絡まって固定されています。ハンモックのような構造が、歯周靭帯と呼ばれるものです。抜歯されるときに、この靭帯が取り除かれないと、正常な治癒が起こらず、結果として穴が残ります。この穴はキャビテーションと呼ばれます。
1966年にアメリカで行われた調査では、抜歯された691例のうち77パーセントにキャビテーションがあったか、完全に治癒していなかったかのどちらかだったとのことです。親不知がいちばん治癒しにくいところで、354例中実に313例にキャビテーションが見られました。
キャビテーションは見つけるのが非常にむずかしいものです。日本では、その存在すらあまり知られていません。このキャビテーションは数ミリから数センチメートルあります。キャビテーションの中にあるものは生体にとって非常に毒性がありますが、幸いなことに、この部分の血液の循環は非常に限られているため、毒素の体内への侵入には時間がかかります。
キャビテーション内の毒素が病気の原因になることがありますが、ほとんどの場合は最初に歯の治療をした日からかなりたって異常に気がつきます。人によってはすぐに反応を起こす場合もあります。
キャビテーションの毒素によって引き起こされる病気には多発性硬化症やルーゲーリック病などの自己免疫疾患が多く見られます。キャビテーションの部分をきれいにすることによって、自己免疫疾患が改善されることはめずらしくありません。
根治療したすべての歯が感染しているとは限りませんが、キャビテーションがある場合は、100パーセント毒素の存在が認められます。
ボーンキャビティー(骨空洞)は、FDOJ(脂質変性顎骨歯槽骨壊死)と呼ばれる顎骨内に生じた空洞状構造物で、内部にコレステロール変性物質の沈着が認められています。
抜歯窩の治癒不全や、癒着した失活歯の下部に生じることが多く、抜歯時の汚染された歯根膜や歯槽骨の掻把不足などが原因です。さらに、骨再生に必要な栄養(ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、亜鉛、マグネシウムなど)の不足や高LDLコレステロール血症、高ホモシステイン血症なども原因となりえます。
パノラマレントゲンやCTなどで、境界明瞭あるいは不明瞭な透過像として認められます。鑑別が難しいですが、ドイツでは専用の発見器「caviTAU」が開発されています。
FDOJ(脂質変性顎骨歯槽骨壊死)からは、全身の炎症性疾患と関連性が深い炎症マーカーであるRANTESと呼ばれる炎症性サイトカインが発生し、血流に乗って全身に波及して様々な疾患と関連していることが報告されています。
抜歯時の抜歯窩の汚染された歯根膜や骨面の徹底的掻把適が、最大の予防となります。
神経を抜いてしまった歯はもろくなってしまうため、歯肉の中で根っこの部分が折れてしまうことがあります。歯根破折による慢性炎症は全身の様々な症状や病気の原因となる可能性があります。